旅するコーチのblog

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中学3年生に宛てた手紙

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中学3年生に宛てた手紙。

「まだ出会っていない君へ
僕が旅にでる理由

小さな頃、保育園から家に帰ると、
家の近くで遊んでいた。家から友達の家に遊びにいくのは大冒険だった。
小学校のとき、初めて自転車を買ってもらって、
すごく遠くまで行けるようになった気がして、
自分の行動の範囲が広がった。家の周りが遊び場だった。
中学生になって、電車やバスに乗って遠くに出かけることもできるようになった。
お祭りに行ったり、街にいったり、よく行く場所もできてきた。自分の街が遊び場だった。
高校生になって、もっと遠くまででかけるようになった。
自転車でもどこまでも行けるような気がしていた。隣の街まで、行けるようになった。
大学にはいって、原付に乗れるようになって、どこにでも行けるようになった気がしていた。

僕が覚えている最初の旅は19歳でニューヨークに一人で行ったことだった。
それまで海外旅行にいったこともないし、もちろんパスポートも持っていなかった。
10代のうちに、一度でもいいから海外に行ってみたいと思って、
おじさんの友達の家にホームステイさせてもらって、2週間の一人旅に出かけた。
周りは外国人だらけに驚き、国籍も、人種も、肌の色も、
みんなが違うということに改めて感動した。
日本にいた時、周りからどう見られるだろう、とか、
できるだけ恥ずかしいことはしないようにしようとか、
自分は変なことをしてないかな、みんなと同じようにしているかな、と、
そんなことを意識はしていなかったけど、
ずっとアタマの片隅に持っていたと思う。
でも、ニューヨークで街を歩いている時に、
誰も自分のことを気にする人もいないし、
みんな違って、その違いが、すごく素敵で、
とても自然体な気がした。
自分を知っている人が誰もいない場所は、
どんな自分でいてもいい気がした。
すごく自由で、すごく開放的な気分になった。
日本にいる時に、僕は焦っていた。
何に焦っているのかわからないけど、
いろんな、それこそ数えきれないくらいのやらなきゃいけないことに、
アタマを埋め尽くされていた。
学校の宿題をしなきゃ、クリーニングをとりにいかなきゃ、
部屋の掃除をしなきゃ、洗濯しなきゃ、サークルにいかなきゃ、
メールの返信をしなきゃ。
たくさんのしなければいけないことを抱えていたけど、
それが当たり前だと思っていたし、苦痛でもなかった。
でも、旅に出て、ニューヨークの街角で、
ふと「自分がしなければいけないことが何一つない。」
ということに気がついたんだ。
何をしてもいいし、何もしなくてもいい。
このあと、カフェに行ってもいいし、美術館に行っても、
映画館に行っても、街をぶらぶら歩くだけでもいい。
自分が次の一歩を踏み出して、いつ止まっても、
いつもう一度歩き始めてもいい。
その感覚を味わった時に、自由って言うことを初めて体感したことを今でも覚えてる。

それから、いろんな場所にひとりで旅をするようになった。
将来のやりたいことがわからなかった僕は、
大学を一度休学して、旅に出てみたりもした。
大阪から船で韓国に渡り、そこから中国へ。
標高4000メートルの超えるチベットや、ネパール、混沌の国インド。
世界の最貧国のひとつバングラディッシュや、ムスリムが平和に暮らすパキスタン
当時も内戦が続いていたアフガニスタン、歴史のあるイラン、トルコ。
旅をして、自分の目で見て、耳で聞いて、匂いを嗅ぎ、
自分の肌と心で、世界を感じたいと思っていた。
テレビや、新聞やネットでも世界のことをしれるけど、
それはどこか、切り取られた断片的な情報で、
僕は世界のことを何も知らなかったように思う。
旅を通して、体験する、という素晴らしさを知ったんだと思う。

まだ見たことものない景色、
まだ出会ったことのない人たち、
まだ味わったことのない食べ物、
まだ感じたことのない感覚。
そういうものが世界には溢れている。
見渡す限りの満天の星空や、
涙が出るくらい美しい夕焼け、
子供たちの純粋できらきらした笑顔。

旅にでると、いつもの常識が通じない。
もちろん言葉も通じないことも多い。
場所によっては危険なところもあるし、
快適な生活ばかりじゃない。
もしかしたら、旅に出て帰って来れなくなるかもしれない。
それも覚悟した上で、人は旅にでる。
もちろん命が大事なことは百も承知だし、
家族を悲しませたくないと思う。

旅に出て感じる、五感が開いていく感じ。
自分の感性が敏感になっていく感覚。

海外旅行だけが旅ではなくて、
自分が普段足を運ばない場所に、行ってみること。
それもひとつの旅だと思う。
行く前と、行った後で自分の中に起こる小さな変化。
心が動く感じ。
そんなことを思って、今日も僕は旅を続けている。
まだ出会っていない君に世界のどこかで会えることを楽しみにしているよ。」

 

中学校の先生をしている友達が、授業で中学生たちに向けて旅人からの手紙がほしいということだったので、まだ出逢っていない中学生に向けた手紙を書きました。
中学3年生の最後の授業でこの手紙を使った授業をしてくれたそうで、1年ぶりにその授業の中学生からの感想を受け取って、一枚一枚読ませてもらいました。

素直な言葉で綴られた感想は、なんだかすごく胸を揺さぶりました。
僕だけじゃなくて、家族で世界一周をしたそうくんの手紙もあったそうで、それもまたいいなと思いました。
この機会をありがとう。
今日は日本に帰ってきて、初めて誰にも会わずに、ゆっくりとした一日を過ごしました。
休むことも、一人になることも大事ですね。